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奥能登芸術祭2020+ワークショップ後書


Seacape(SUZU) :Saori Miyake (奥能登芸術祭2020+ SUZU CIATER MUSEUM)





奥能登芸術祭2020+、生徒さんと巡り感想を発表するワークショップに2日間訪れ、個人的に再度2日間、合計4日間鑑賞させていただきました。珠洲の文化、アーティストの内面を覗けたような、そして作品を自分の様々な関係を重ね、とても意味深い旅となりました。



新型コロナが漸く落ち着き、少しづつ生活が活発になってきたそんな時期に伺いました。



この新型コロナでアトリエを去っていかれた方が何名もいます。



今まで毎週通ってくださっていた事業主の方が突然来なくなったり、また別の事業主の方はお別れを伝えて頂き「しばらくお休みします。」とそれ以降お会いできなくなった方もいました。

国や県の助成程度では賄えない事業者も多く、規模がある程度大きい会社運営をしている方程、苦労されていました。インバウンド事業や飲食でない対面商売の方にはほとんど助成がないのも残念でした。

新天地を求め、他県にと移動される方、新しく職業を変えられた方、この11月までにいろんな事が起こりました。

僕もこのままアトリエを継続できるのかと、様々な施作を行ってきましたが、無駄に時間だけを浪費し力の無さを痛感するばかりの毎日です。



そんな中での、芸術祭でした。



新型コロナで開催を延期せざるを得なかった奥能登芸術祭に様々な思いを重ねて作品を見させていただきました。

誰にも悩みがあり、誰にも不安があり、だから努力して切磋琢磨し、毎日を精進して生きるのだと、誰もがそれは理解しています。



でも、どうしようもない時もあります。新型コロナは今ままで経験した事のない試練を与えました。抗えない試練を。









珠洲の廃れゆく文化を憂う作品、汚染される海を現在の環境を嘆く作品、珠洲文化の衰退をモチーフにする作品が多く、地域の特色を写した印象的な作品が多く、全ての作品を鑑賞し終えた時にこの地域だから出来た芸術祭であったのだと強く思いました。


荒廃していく無人の建物を再利用したり、使われなくなった主人のない物を扱い、また珠洲に特徴的に存在する文化を伝えたり、荒廃するだけの運命だったものが、芸術という価値を纏い再出発している事、その事がすでにこの芸術祭の美しさを物語っています。






作品No.2『余光の海』南条嘉毅〈日本〉スズ・シアターミュージアム

ディレクター/北川フラム

キュレーション・演出/南条嘉毅

民俗文化アドバイザー/川村清志(国立歴史民俗博物館)

建築改修・空間設計/山岸綾(サイクル・アーキテクツ)

音楽/阿部海太郎



各地を移動し作品を制作し、その地の宗教や文化をモチーフにし作品を制作されています。これまでにも大地の芸術祭、瀬戸内国際芸術祭に参加し、土地の文化をアートを通して伝承し、他府県から訪れた方にわかりやすく伝えています。

珠洲の古代の地層から掘り出した砂を敷き詰め、木造船、古いピアノなどを据えて映像と音と煙を使いシアターミュージアムの中核を担っていました。

美しく幻想的でメランコリックな世界が、ここに来た喜びを実感させます。





作品No.41『軌間』サイモン・スターリング〈イギリス/デンマーク〉

スコットランドを代表するコンセプチュアルアーティスト。



新型コロナでスコットランドから珠洲現地への渡航活動を制限されますが、何処からでも情報伝達できるインターネットのおかげで、距離を超越した活動を行えます。

その「距離」をモチーフにし、廃線となった線路に400フィートの距離で映像プリントが設置されます。


目の前に設置されたモニュメントがメインモチーフでなはく、距離、見えない線をスコットランドと珠洲に敷く。


インターネットが現実の距離感を希薄にさせ、スコットランドでの仕事を珠洲の場所に置き換え、目の前に存在するモニュメントがスコットランドと珠洲を同一視して感じることができる装置として存在します。

綿密に思考し表現された作品に感動せずにはいられませんでした。





作品No.28『偏西風』『対馬海流・リマン海流』磯辺行久〈日本〉



「エコロジカル・プランニング」(生態的土地利用計画)の活動で、日本の第一人者。

偏西風が日本に最初に影響を及ぼす場所、寒流と暖流が能登半島の沖合いでぶつかる事に注目し、風と海流、ふたつの特徴を体感するために行われたワークショップの記録を展示していました。

これが珠洲の特徴的な環境なのだと、視覚化して理解できるようにデータをビジュアルに変換し展示しています。


地球の動き、自然、特徴的な環境を作品にしています。ここでしか、ないのだよと。


ワークショップには地元の小中学生に参加してもらい、風船に返信用ハガキをつけ偏西風で何処まで飛ばされハガキに何が書かれて帰ってくるのかを体験させています。

小中学生には意図が理解できなくても、大人になったら珠洲でしか体験できなかった風を磯辺さんから学んだのだと理解できるのではないのかなと、次世代に託しているようなワークショップであたたかい気持ちになりました。





作品No.25『あかるい家 Bright house』中島伽耶子〈日本〉



光らない電球で過剰に装飾されたシャンデリアと、無数の穴が空いた壁面。そこから漏れる陽の光。

豊かさが家の中心から溢れるのではなく、外の環境から豊かさを知ることができると説明しています。

珠洲の町並みは綺麗で整っています。庭も綺麗です。その豊かさを外からの影響力として、光らないシャンデリアと対比して壁面の穴は外界からの光を導くデバイスとして存在しています。


廃屋という壊れる運命の建物を美しく見せるのは、もう少し壊すことだったのだと、無数の穴から漏れる光が感じさせます。


光をモチーフにした中島さんの作品はとてもロマンチックで幻想的でした。





作品No.8『幻想考』さわひらき(日本/イギリス) 建築改修・空間設計:山岸綾/音:生駒裕子



旧日置公民館の各部屋のそれぞれの部屋に個別の世界を製作し連続して上映。

メインの広間には光り輝く部分と闇の部分を作り、そのコントラストが空間を作り独特の世界を演出していました。奥能登の神事「あえのこと」と、作家の生い立ちにも関わる都市郊外の「新興住宅地」に通底する幻想性を、空間全体を使ったインスタレーションにより描き出しています。


スズ・シアターミュージアムに並んで人気の場所で、車は会場に止められないほど。

35分の上映を見終わると、もう一度見たくなる世界観で、人気な理由が体感的に理解できました。





全ての作品を4日間で鑑賞し終わり、この芸術祭の偉大な事を痛切に感じました。

朝9:30〜17:00まで昼食休憩以外、移動と鑑賞のみ、前半になる2日間は生徒さんとのワークショップで、作品に対しての感想を述べ合い、とても楽しく有意義な時間を過ごせました。

後半2日間はソロでじっくりと見直したかった作品と見損じていた作品を見させていただきました。





本当に素敵な芸術祭で感謝でいっぱいです。


次回の3年後、今度はどんなアーティストがこられるのか、本当に楽しみです。





そしてお隣、長野県の「北アルプス芸術祭2020-2021」は11月21日まで開催しています。

感染対策をし迷惑のかからないようにして伺いたいと思います。

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