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ONLINE COURSE 2【Art theory】

アーカイブ7

前回美意識の歴史、目の視差や両眼融像、パースペクティブについてご説明いたしました。

今回は、アプローチについてご説明します。

目的

目的を持つ事で取り組む意識が変化し、過程や結果に変化が現れます。

デッサンをはじめる前に、モチーフの何を捉え、何を表現するのかを定め、ゴール設定をある程度定めます。

目的なく何となくはじめたデッサンでも、集中して取り組めば自ずと目的が定まり、結果に繋がる。それを可能にできる方には条件があり、論理思考が高く、過去の経験から仮説を立て行動を変化できる方でないと難しいと思います。合理性を担保するためには、目的を定めて進めたほうが懸命です。

そして目的を定めるには、自身のウィークポイント、ストロングポイントを把握し、自分の状態を知っておかなければ的確な方法を定めることはできません。

例えば、人物画を描きたいとデッサンを始めたとします。

目的の為の方法を定めず、描きたい欲求のままに描いても、ほとんどの場合良い結果にならないということです。

人物画を描くには美術解剖学で人体を学び、見えない角度での四肢の縮尺の理解、パースペクティブによる伸長効果も理解しなければいけません。

そういった表現の下地になる知識や理解があって結果に繋がります。

目的を定めはじめるには、まず今の自分に足りない技術、知識が何なのかを探ってみてください。

その上で足りない技術を養う目的設定とは何なのかをじっくりと考えます。

​表現力を身につけると言うことは、思考力を養うこと、知性を高める事です。

 

具体的な例

「今回はモチーフのフォルムを出来る限り正確に形取ろう。」と目的設定したとします。では、どのようにしてその目的を達成するのでしょうか?

自己の客観的な推測力を信じ目測だけで描くのでしょうか?その他に論理的な方法はないでしょうか。

・デッサンスケールで稜線を写し描く。

・はかり棒を使い、中点を定め、起点から垂直水平に沿って相違を測り、ある部分の長さと他の部分を比較し長さを計測する。

その他にも縮尺コンパスを使ったり、等倍で描いたりとフォルムを測る方法があります。

ポイントは、目的を達成するための具体的な方法をはっきりと持っているという事です。

​フォルムを正確に描くという目的には、どのような方法が良いのかを今の自分の力を見極め選択します。

また、方法を定め実践しても思ったような結果を得られない場合もあります。その場合の為にもA案、B案と代案を用意しておくのがスマートです。

主体・客体

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fig1 主体認識

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fig2 客体認識

概念の変化

 

見る見方の概念を変化させ、目測力を向上させる技術が主体客体認識です。

それは見ているものを意図的に見ないようにする意識変化の技術で、抽出したい情報だけを観る技術です。

まず主体認識と客体認識の違いを理解します。

主体とはモチーフそのものを指し(fig1)、客体とはモチーフ以外の背景、輪郭(fig2)を指します。

細部と全体、マクロな視点とミクロな視点を持つ事でモチーフを総合的に理解する力を向上させます。

主体だけを意識しすぎると全体的なフォルムの狂いを認識しずらく、描画に影響が現れます。

 

デッサン中によく行う行為として、席を立ち少し後ろから俯瞰して描画とモチーフを観察します。

これは客観的な認識方法として、とてもよく行いますが、席に座ったままでこの俯瞰認識を高める方法がこの概念変化による抽出技術です。

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fig3 頭部を主体化

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fig4 頭部を客体化

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fig5 頭髪部分を客体化

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fig6 顔面を主体化

主体客体を自由に変化させる

​客体を観るという行為は背景を意識する事ですが、主体を何処に置くのかによって背景が変わります。

様々な部分で客体を設定し見方を変化させフォルムの認識力を高めます。

fig3は、首のラインから頭部を別けて認識出来るように、主体を頭部だけにしています。

fig4は、頭部を客体化し頭部全体の輪郭線の認識力を高めています。

fig5は、fig4で客体化した頭部を更に分割し、頭髪だけを客体化し頭髪の輪郭線やボリュームの認識力を高めています。

fig6は、顔面以外を客体化し、顔面と意外との分離認識を高めています。

主体客体は目測力を高める

​このようにして、見る部分を意図的に見ないようにする事によって、位置関係の理解を深めます。

主体、客体のものの見方はデッサンを行う最中に何度もいろんな場所で行います。

この技術が高くなる事によって、目測だけでモチーフを測る力が向上します。

測定

測り棒は、正確に測れるものではなく、実寸とのずれがあります。

サイズを測る際は、視点から遠のくにつれサイズにずれがある事を念頭に相対的な測り方と合わせて利用します。

​まずは注意点を確認します。

図り棒での計測精度

fig7は、図り棒を使って対象物のサイズを測る時に起こる誤差を図にしています。

 

視点SPからラインL1のP1を基準サイズとし、P2ー3と順をおって等幅計測すると、実際のサイズと見た目に誤差が生まれます。

等間隔にサイズを計測したつもりが視点から遠のくにつれ、距離による測定伸長が起こります。

これは測定する物の位置と視点との関係で、視点から測定物が離れる程に小さく見える原理原則の為です。「Art Theory アーカイブ6参照」

 

また対象物を測定するとき、肩のStarting Pointを軸にして測るので観測軸のズレも加わり、左右どの腕、どの目で図るのかのよってもずれが変わります。

このように図り棒で測れることは大まかな見た目のサイズになり、実際のサイズを正確に測ることはできません。

​こういった誤差を理解しながら図り棒を扱う事が前提となります。

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fig7

角度の測定

図り棒で角度を測る精度もそれ程高くありません。

肘を伸ばし、モチーフの測定したい角度と図り棒を重なるようにし、上半身全体を動かすようにして描いたデッサンに図り棒を合わせ比較します。

ですが、図り棒をしっかり固定し描いたデッサンまで図り棒を移動させたつもりでも、手首がほんの少し動いただけでも精度は極端に落ちます。

その対策として、何度か繰り返した中での平均をとる事で精度を高めます(fig8)。

図り棒で角度を計測する精度は低いです。

だからと言って、図り棒で角度を計測する事をやめるより、角度を何度か測定し平均をとって使用した方が良いと思います。

角度測定.gif

fig8

相対位置の信頼度

図り棒を相対的に対象を測る基準ラインとして使う場合、信頼性が上がります。

fig9は幾何物を複数個設置した図です。

fig9下図の赤線W1〜3、V1〜3を図り棒だと仮定します。

物体が交差する部分や角を軸とし、水平、垂直に図り棒を構えた場合、図り棒を基準線にし相対を測ることができます。

これは実際のサイズを測る事ではなく、相対関係の理解ですので、見たままを客観的に理解できます。

赤線W1を見ると、左奥の球と手前の立方体が交差する部分に図り棒を重ねています。そのままW1上を右に流し見ると、右奥立方体の角の部分と重なっています。左の立方体、球を使い、右の立方体の位置を相対的に測っています。

このように垂直、水平に図り棒を構えて測ることは有効的な計測になります。

お気付きの方もいると思いますが、W1〜3、V1〜3の赤線がデッサンスケール(デスケル)のように見えないでしょうか。

デッサンスケールは支持体の比率と同じ物を使いますので、形どりの最初だけ扱いがちですが、相対をとって測る道具としても有効です。その場合はどのタイプのデスケルを使用しても相対で関係を測定できます。

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fig9

デッサンスケール比率確認

デッサンスケールは、支持体の縦横比が同じものを使用します。

縦横比と同じデッサンスケールでモチーフをはかりますが、比率の違うデッサンスケールであっても、相対で位置確認をする道具として使用できます。

またFサイズであれば比率が異なってきますので近似値で補佐的に使用します。

【比率確認】

紙サイズがF6 (318x410mm) → デスケル F6 (近似比率 F0、F50)

紙サイズがF8 (380x455mm) → デスケル F8 (近似比率 F20)

紙サイズがF10 (455x530mm) → デスケル F10

紙サイズがF・P・M → デッサンスケール F (F列・P列・M列用) ※簡易版

紙サイズがB版 → デッサンスケール B (B列洋紙用)

紙サイズが木炭紙 → デッサンスケール D (木炭紙用)

使われる紙がB2・B3であればデスケルBを。スケッチブックを使われる場合はデスケルF(簡易版)を。

※簡易版は比率が完全に合っているものではありません。

目測から始める

目測し違和感を測定する

デッサンの最初からデッサンスケールや図り棒で測定しポイントを取って行く事は論理的で合理的です。目測は直感的で論理的ではありませんが、まずは目測をし凡その位置を取ります。空間認識力や物の位置を理解する力は直感力です。​そして目測で描けるようになることが最終的な達成だと思いますので、最初は目測で凡その位置を取るようにしましょう。

そして違和感がないか、俯瞰してデッサンを確認します。違和感があれば、どこにどのような違和感があるのかじっくりモチーフと見比べます。どこに違和感があるのかを確認できれば、目だけでその違和感の原因を読解できないか試んでください。相対的に物を見て、マクロな視点で客体を利用し確認します。

​目測であった違和感を今度は図り棒で測定し、論理性を高めていきます。

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fig7

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fig8

上下左右の比をとる

fig7 モチーフの外角の大まかな位置を主体客体で目測を行い、ポイントを記します。

fig8 実際に目測の位置が合ったのかを、図り棒を使って測定します。まずは、頭部左右の隆起した髪の毛のラインW1を計り、V1のラインにあてて、どれぐらい差があるのかを頭部の左右サイズを元にして上下の長さを計ります。

次に肩から胸にあてたV2のラインを計り、V2でのサイズを元にW2の長さを計ります。

​短い部分を元に比率をとることで、凡そのサイズがわかります。

測定は大きく区切る

モチーフの中心に近い部分で均等に分割するようにして測定していきます。大きく測定し、少しづつ細かく測定します。

中心に近い場所で分割できる場合、比を測る労力が簡単になります。比率の差が大きいと実際の誤差とを考えそれなりに測定を繰り返さないといけません。

サイズを測る際は中心に近い場所で行った方が誤差は少なくなります(fig7参照)。

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fig9

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fig10

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fig11

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fig12

fig9 モチーフの縦の中心となりそうな顎の位置を測定します。V1V2、顎で区切ってどちらが長いか、どれぐらい違いがあるのかを測定します

fig10 顎のおおよその位置が定まれば次は顔の目の中天位置を測定します。V1V2、W1W2どちらがどれぐらい違うのか計って位置を定めます。

fig11 左右の目の中心が定まったら、頭部の正中線を描きます。

fig12 続いて左右目のライン、さらに身体の中心を取るために、身体の正中線を必要であれば描きます。

相対での測定

信頼性の高い測定

fig9でも説明しましたが、水平、垂直で相対位置を確認する場合とても信頼性が上がります。

 

ある一点を基軸にし水平垂直線で他の位置を確認します。

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fig13

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fig14

fig13は目頭や目尻といった要所を起点とし、垂直線で上下の関係を確認しています。

V1は向かって左目の目頭に図り棒を構えています。目頭から下、顎の輪郭付近が首元に重なりぎみになっています。この位置を記憶し、描いたデッサンとの違いを確認します。図り棒が長い場合、モチーフ全体を覆うことができると思いますので、肩にできた客体の三角形を記憶し、デッサンとを見比べたり、相対位置で関係を確認しながらも客体を利用します。

 

fig14、W1はまぶたの上を起点にして水平線で左右の関係を確認しています。左目の位置、右目の位置、相対から確認できると思います。

このように相対で測る位置関係は論理的でサイズを測るような動作も必要としないので合理的です。

​相対位置の信頼度でも書きましたが、デッサンスケールは最初だけ扱うものではなく、相対を確認するものとして利用すればとても良い道具となります。

モチーフの要所になる部分を探し、そこを起点にして水平垂直で関係性を確認して見てください。

​途端にデッサンのクオリティが上昇すると思います。

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