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集合静物画、そしてここから始まった新しい美の概念


桜桃、苺、スグリ 』1630年 ルイーズ・モワヨン Louise Moillon photo by wiki








集合静物画は、生活の一部を切り取った日常を描写している画が多く、その時代の日用品をモチーフにしています。

モチーフが手に届く範囲の身近なもので行われている理由のひとつに、何気ない日常に潜む美しさを紡いでいるという事もあるのではないでしょうか。




一般的に集合静物を行う主目的が、空間や距離、材質の表現とされます。

その前提の上に、どのような描き方をすれば自分らしさが表れるのかを研究します。




静物画を描く為にもうひとつ意識しておくべき事が、視点の位置や距離による見え方の違いです。

モチーフ毎に視点を移動をし視点の中心を変え全体が平面的に見える絵画的な描き方をするのか、固定視点で忠実な遠近法を再現描写するのかを決定し進めます。

※視点が変化するという意味が伝わりにくいかもしれません。過去に行ったオンライン講座Art theoryにその意味を詳しく記載しておりますのでよろしければご覧くださいませ。「Art theory 6」




先ほどもお伝えしましたが、集合静物画は材質の違いを表現する事が目的の一つです。

着彩の場合であれば色彩での表現も行えますが、デッサンとなると陰影とタッチでその表現を行いますので、描画材をどれだけ扱えるのか、どれほど技術を習得しているのかで結果に現れます。

デッサンで良くモチーフにする石膏像は、基本的には単体で描き、そしてそのほとんどが石膏の白色で色を持ちません。白い事によって陰影だけを意識して認識できるので色のあるモチーフと違い光と陰の勉強にも最適です。

それに比べ、集合静物はモチーフが多く複雑です。様々な材質とモチーフ間の距離の認識、空間認識を必要とします。


ですが集合静物を描く事で、モチーフを単体、複数という個の概念で観るのではなく、塊として観る※マッス(Mass)の概念が強く備わります。

マッス、つまり纏りや塊でモチーフを観なければ、集合したモチーフの稜線を簡略化して捉える事ができません。

集合静物や風景を描く際にはこの簡略化するマッスの概念と、何処をどのように簡略化すれば合理的に描画できるのか、または自分が思う表現を行えるのかを考える思考や仕事への構成力も養われます。


※マッス Mass 集団や塊を指します。

集合したぶどうの房を一粒一粒描くよりも、房として塊で捉え輪郭や陰影の稜線で描く事や理解することを指します。色認識、つまり形を意識するのではなく、緑部分や青部分といった色で纏りを認識することも指します。



視点という普段あまり意識しない事が、平面に描くことによって何処に視点を固定させる事が正しいのか、あるいは正しいのか考えなくてはならなくなります。


この視点という概念をさらに拡大変化させていく芸術の運動がセザンヌの『リンゴとオレンジのある静物』から始まります。





『リンゴとオレンジのある静物』1895-1900年 ポール・セザンヌPaul Cézanne photo by wiki




最後に集合静物を多面的に捉えた革新的なセザンヌの静物画を紹介します。


セザンヌの『リンゴとオレンジのある静物』はモチーフの美しさを追求した多視点描写の作品です。

一方向からモチーフを眺めるのではなく、多方向に視点を起き、セザンヌが美しいと感じた角度でモチーフ描いています。

その為に画面は不安定で重力をあまり感じません。ですがこの不安定な中に存在する統合された美しさはセザンヌの感性の鋭さを表しています。不安定であってそして美しくもあるという、多視点で得たモチーフの個々の美しさと、それを羅列することの危うい美しさを表現しています。


このセザンヌの作品があったからこそ、フォービズム、キュビズムへと多視点の系譜が引き継がれ、ピカソの作品へと引き継がれます。

美術界で良く行われる文脈を読んだ引用です。


セザンヌの集合静物を観る特異な視点があったからこそ、今の現代美術へと続く変容の歴史が誕生しました。

これまでの絵画の世界の美のあり方を、概念を変化させた歴史的な作品がこの『リンゴとオレンジのある静物』です。


この作品によって、現代美術が始まりました。

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